裁定買い残と裁定売り残~日経平均株価の天井・底値を予測する~
株価を動かすのは短期的には需給だと言われます。そして、需給を表す指標に「裁定買い残」「裁定売り残」があります。これらについては、外国人投資家に左右されている日本の株式市場の傾向を把握するために重要な指標と考えています。今回はこの「裁定買い残」や「裁定売り残」、そして「裁定取引」について少しお話します。
裁定取引とは
まず「裁定買い残」や「裁定売り残」を理解するために、「裁定取引」について説明します。
「裁定取引」は、日経平均株価の先物と現物との差による利益を取る取引手法で、外国人投資家が多用します。この取引により日本の株も結構左右されています。
重要となるのは、SQ(決済期日)に先物と現物の日経平均株価が同じになる点です。
先物が高ければ(先物>現物)、先物を売って現物を買う「裁定買い」を行い、逆に、先物が安ければ(先物<現物)、先物を買って現物を買う「裁定売り」を行います。
具体的には以下の通りです。
裁定買い
先物10,600円、現物10,500円を、11,000円で決済した場合
先物 400円の損失(10600-11000=-400)
現物 500円の利益(11000-10500=500)
結果100円の利益となります。
裁定売り
先物10,500円、現物10,600円を、10,000円で決済した場合
先物 500円の損失(10000-10500=-500)
現物 600円の利益(10600-10000=600)
結果100円の利益となります。
このように売りと買いとをセットで取引し、読みが外れても片方がヘッジの役割を果たすので、いわば手堅く利益を狙う取引手法ということができると思います。
そして、この取引手法において実施した裁定買いの現物部分を「裁定買い残」と言い、一方、裁定売りの現物部分を「裁定売り残」と言います。
「裁定買い残」は将来の売り圧力となり、「裁定売り残」は将来の買い圧力となるため、需給を表す重要な指標となります。
「裁定買い残」で日経平均株価の天井と底値を予測する
「裁定買い残」で日経平均の天井・大底の予想を立てることができます。
実は、過去を振り返ると「裁定買い残」の天井と大底は、日経平均株価の天井と大底とほぼ一致しています。
過去でみると「裁定買い残」が3.5兆円付近を超えてきたら、天井が近いと考えて、要警戒です。一方、2.5兆円を下回ると底値が近いと考えられます。
これは、ピンポイントで相場の天井と底値を当てるものではないので、ほかの指標を合わせて確認するようにすると良いと思います。
日本取引所は週ごとに以下のホームページで、この「裁定買い残」「裁定売り残」を発表しています。
日本取引所グループホームページ(「プログラム売買の状況」をご覧ください。)
11月5日に発表されている11月1日現在の裁定取引のポジション残高は、約5551億円となっており、底値圏にあるということができます。日経平均株価が最近これだけ上昇していてこの水準です。今後短期的な調整はあるでしょうが、この様子だと大きく売り込むには力不足だと考えられます。もしかするとこの上昇は息の長く大きいものになっていくかもしれません。
過去最高の「裁定売り残」!解消が相場を押し上げ?どこまで続く?
一方、「裁定売り残」は9月前半に2兆円を超えましたが、それから現在は約1兆2491億円まで減少しています。この「裁定売り残」の解消もあり、この強い相場が続いていると考えられます。日経平均株価のチャートを見ても、ちょうど9月の頭が日経平均株価上昇の起点になっています。
日経平均株価(引用元 yahooファイナンス)
こうなりますと、「裁定売り残」の解消がどこまで進むかが、相場上昇の終わりを決めるということかもしれません。
過去を見てみると、だいたい8000億から1兆2千万円ぐらいが、裁定売り残の天井でした。そう考えると、9月には一時はその水準の2倍まで裁定売り残が積みあがったことになり、まさに異常値と言えると思います。(これには日銀のETF買いが関連しているとの話も聞きますが、私には真偽はわかりません。)過去の水準(8000億から1兆2千万円)はあくまで、「裁定売り残」のピークであり、通常はもっと少ないということです。現在は約1兆2491億円まで減少していますから、だいたいこれまでのピークには近づいたことになります。
このまま一気に異常な状況の解消に向かうのか、一旦足踏みをするのかわかりませんが、今が一つの分岐点に来ているのは確かかもしれません。
いかがでしたでしょうか。これからは「裁定買い残」「裁定売り残」についてもほかの指標と合わせてチェックしてみてはいかがでしょうか。
今は、「裁定買い残」「裁定売り残」は、今明らかに異常値です。私がこれが解消され、大相場に突入することを願っています。